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【特別企画 気になるママの病気】
乳がん検診を受けていますか?

ちば県民保健予防財団総合健診センター 乳腺科 橋本 秀行 先生

乳がんの患者さんは増えています

日本では現在、乳がんの患者さんが年々増え続け、1年間に9万人を超える患者数となり、女性のがんでは一番多くなっています(図1)。
これは女性の11人に1人が一生のうちに乳がんになる確率であると計算されています。そして、残念なことに乳がんの死亡数も増加を続けています。どうして乳がんは増えているのでしょうか?
その答えは、早い初潮、遅い閉経、未婚や未産、肥満、糖尿病、アルコールや喫煙等言われていますが、これといった決め手になるものはありません。
したがって、乳がんの発生を止めること(一次予防)は難しく、検診による早期発見により乳がんで亡くなる人を減らすことが最良の方法と考えられます。
実際に早期発見された乳がんは、9割以上が治っています。

最適な乳がん検診の 方法とは?~高濃度乳房について~

乳がん検診と聞くと、「マンモグラフィ」という言葉を連想される方は多いと思います。
マンモグラフィは、乳房を圧迫して(はさんで)撮影するレントゲン検査です。これにより、手にふれるしこりはもちろんのこと、手にはふれない小さなしこりや0.5mm以下(シャープペンシルの芯より細い!)の微細石灰化(カルシウムの沈着) まで発見することが可能となっています(図2) 。
とはいえ、実はすべての乳がんがこの段階で見つかっているわけではありません。
さらに言えば、さしものマンモグラフィも万能ではありません。
というのは、マンモグラフィに全く写らない乳がんもあるからです。マンモグラフィ検診で異常を指摘されなくても、数ヶ月後に手に触れる乳がんが発見されることもあります。

マンモグラフィに乳がんが写らない原因は、年齢による乳腺密度の違いが大きく関係しています。
乳腺は年齢とともに減っていきますが、一般に閉経前の乳房にはたくさんの乳腺があります。
乳腺はマンモグラフィで撮影すると白く写るため、乳腺がたくさんある人の乳房は、全体が白く写ります。(このような乳房を『高濃度乳房』と呼びます。『高濃度乳房』は決して病気ではなく、あくまでも体質と考えて下さい)
そして乳がんのしこりも、マンモグラフィでは白く写ります。乳腺も乳がんも白く写るため、重なってしまうと乳がんを発見できないことが多々あるのです(図3)。
20代・30代は乳腺の量が非常に多いので、マンモグラフィ検査は基本的に不向きと言えます。
さらに、閉経前後の人の中にも、マンモグラフィでは乳がんが見つかりにくい人が多くいます。そして日本では、この年代の乳がんが一番多いのです(図4)。
そのようなマンモグラフィでは乳がんが見つかりにくい人たちに必要な検査が「超音波検査(エコー)」です。

超音波検査と、理想的な検診

超音波検査は音波を使って調べる検査のため、マンモグラフィのようにX線の被ばくもなく、妊娠中や授乳中の人でも検査を受けることができます。
この超音波検診を、千葉県では全国に先駆けて平成14年度より県内の自治体(市町村の住民)を対象に、検診車による移動式の乳がん検診として開始しました。

現在、4台の検診車が、『女性のための女性による検診』をスローガンに、千葉県内を回っています(図5)。

マンモグラフィ検査と超音波検査は全く異なる検査で、双方ともそれぞれによく見えないがんがあるため、理想としては、20代・30代の若い方は超音波検査を、ある程度年齢を重ねた方は、超音波検査とマンモグラフィ検査の両方を受けていただくことが望ましいです。

まとめ

一番大切なことは、良い検診が行われていても、受ける人が少なくては意味がないということです。欧米では検診受診率が70%を超えていますが、日本では約40%という現状です(図6)。

乳がんは、誰もがかかるかもしれない病気です。「私は知らない」、「私は乳がんにならない」、「興味がない」、「関係ない・他人事」では済まされません。

私は以前、若い乳がん患者さんを看取ったことがあります。若いということは、家庭では小さい子のお母さんであったり、職場ではバリバリ働いている年代ということです。
そういう若い人たちが乳がんで命を落とすことは、ご家族にとって一層辛いことだと思います。検診を受けてもらえていたら、そういう人たちを救えたかもしれないという無念な思いが強くあります。

乳がんは、早期に発見されれば9割以上が治る病気です。そのためには、自覚症状が全くない状態のうちに、乳がんを画像診断(マンモグラフィや超音波検査)によって早期発見する必要があります。
少しでも多くの人に乳がんを知ってもらい、検診を受けていただきたいと思います。周りに検診を受けていない人がいたら、ぜひ受診を呼びかけていただけますようお願いします。

<2018年9月発行「ちばエコチル調査つうしんVol.13」より転載>

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