キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第19回>
「ちばエコチル調査つうしん Vol.24」(2024年3月発行)より一部改変して掲載)
やる気を育てる関わり方
子どものやる気はどこからくるの?
子どもはどんな時にやる気が出るのでしょうか?
心理学では、やる気を引き出す動機づけとしての「ほうび」や「目標設定」について、研究が行われています。何かを達成するための動機づけとして「ほうび」を示す場合は、達成できるように適切な目標を設定することが大切です。難し過ぎるとほうびをもらえる可能性は低くなり、やる気はあまり出ないようです。
大きな目標設定が必要な場合には、小さなステップに区切り、ステップごとに、小さなほうびを用意します。小さな子どもは、シールなど喜んでくれますが、思春期に入ると、何がいいでしょうか?
今まで聞いた例には、好きなおかず一品を夕食につける、ゲームを一緒にする、ゲームをしていい時間を少し長くする、などがありました。
目標を達成すると、「自分はできる」と思えるので、やる気につながります。「自分はできる」という信念(信じる気持ち)は「自己効力感」と呼ばれます。自己効力感は自分の成功体験により育ちますが、他者から認められる・ほめられる体験などの他、うまくできる人を見ることなどでも育てることができます。
他者との関わりで育つ感覚として、「自己肯定感」や「自己有用感」もあります。
「自己肯定感」は、「自分はこのままでいい・存在していい」というありのままの自分を認める感覚で、自尊感情とも呼ばれます。「自分はここにいていい」という居場所意識があり、心の健康や仕事・学習に取り組む力と関係するなど、私たちの生活の質に影響することがわかっています。
「自己有用感」は「自分は役に立つ」と思える感覚で、他人の役に立った、他人に喜んでもらえたという体験から育ちます。
これらの感覚は心の安定につながります。安心・安全の保障があると、チャレンジできるエネルギーが生まれます。やる気が育つ土壌ができるのです。
また、これらは人とのつながりで育ちますので、保護者の皆様の関わりで育てられるといえます。
今回は、子どものやる気を育てるために、保護者の皆様が子どもにどう関わるかという3つの活動をご紹介します。
やる気を引き出す関わり方
❶共感スキルを使い、子どもの「自己肯定感」を育てる
共感スキルは、まず、耳を傾けることから始めます。できごとや気持ちなどを聞くようにします。
子どもは、なかなか話したがらないかもしれません。最初は子どもがすぐに答えられるような質問をすることで、しっかり聞いていることを感じてもらえるように話を聞きます。
そして、話してくれる内容にうなずいたり、相づちを打ったり、「そうね」や「わかる」など肯定的な言葉かけをします。自分の話をしっかり聞いてもらったという認識は、自己肯定感を高めます。
同意できない内容である場合には、「あなたはそう思ったのね」など、やはり、本人の考えや感情を受け止めます。
共感してもらえた体験は人とつながる力を育て、子どもにとっての「心の安全基地」作りに役立ちます。
❷子どもに「ありがとう」を伝えて「自己有用感」を育てる
子どもがしたこと、言ったことに「ありがとう」を言います。できれば、毎日数回言います。子どもは、自分がしたこと、言ったことが役に立ったという体験を積み重ねることができます。
なかなか感謝を述べる機会がない場合もあるかもしれません。何気ない機会を捉えます。 例えば、「おはよう」と言ったら「おはよう」のあいさつが返ってきた時、「ありがとう。あなたの『おはよう』で、今日も元気が出るわ」などと伝えるのはいかがでしょう。
何気ない言葉や行動に言う「ありがとう」は、大げさでわざとらしい感謝ではありません。私たちは、子どもの「おはよう」に本当に励まされています。ただ、その感謝を伝えていないのです。子どもからもらっているエネルギーに感謝することは、大人にとっても、つながりを確認する機会になります。
子どもから、しんどさをもらっていると感じる時もあるでしょう。その時は、さらなる成長の機会、つながりを強くする機会などをもらっていると解釈できると、感謝の気持ちが生まれます。
感謝には、人とのつながりを強くし、ウェルビーイング(身体的、心理的、社会的に良い状態)が向上する働きがあります。
感謝の認識や行動はたくさんの良い面を育てるようです。多くの研究で、幸福感、人生の満足感、ポジテイブな気分、希望、精神性を高め、不安や落ち込み、攻撃性を下げるとも言われます。
子ども対象の研究では、感謝することが、自分自身のやる気につながることがわかっています。
❸子どもの目標達成を応援して「自己効力感」を育てる
目標設定は、1~2か月で達成可能な目標にします。できていれば、小さなほうびがもらえるのもいいかもしれません。でも、「できた」という気持ちを味わえることが何よりも大切です。
目標が大きい場合は、ステップに分けた小さな目標を設定し、階段を上るように一つずつ実現しながら最終目標に向かっていきます。
最初のステップは、少し頑張ればすぐにできるように設定するのが大切です。「できる体験」を重ね「自分はできる」という「自己効力感」を育てます。
さらに、目標を達成できるよう、励ます言葉をかけます。この言葉は、子どもが自分自身を励ます時に使う言葉になります。
また、適切なほうび(モノだけでなく、ほめる言葉や一緒にする活動)が必要な場合もあります。与えられたほうびが達成した印となり「できた」を実感する手伝いになります。
無理なくできる関わり方を使いながら、子どものやる気を引き出していけるといいですね。