エコチル調査とは、子どもたちが健やかに成長できる地球環境を未来に残すため
環境省が2011年から実施している大規模調査です

遊ぼう 学ぼう

キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第18回>
 「ちばエコチル調査つうしん Vol.23」(2023年9月発行)より一部改変して掲載)

子どもとメディア機器

学校では、GIGAスクール構想のもと、一人1台端末によるICT(情報通信技術)教育が始まっています。生活を豊かにする方法として、子どもたちにメディア機器をうまく使っていってほしいという願いがあります。
スマホが子どもに与える影響を調べた結果、勉強時間が長くてもスマホ使用時間が長いと学力は下がることが報告されています。
確かに、使用時間の長さはいろいろな問題につながります。睡眠時間が減り生活習慣が乱れると身体への影響が大きく、脳の働きに関係します。人との交流時間が減ると、コミュニケーション力など社会的な力が育ちにくいかもしれません。アメリカの調査(2009年)によると、家族で過ごす時間が少なくなったと答える親の数が2年間で3倍になったそうです。家族関係の変化にも影響していくようで、使用時間についての関心が高まっています。
「メディア機器の使用時間が少ない子どもは、時間を守る力がある」という指摘があります。使用時間を自分で制限できるのは、子どもの自己コントロール力が優れているのでしょうか。

そこで、どういう力があれば、子どもがうまくメディア機器と付き合っていけるのかが気になります。
多くの研究論文を分析し2022年に発表されたある論文では、次のような認知力と非認知力の両方の力が有効だと報告しています。

認知力とは、学校で習う知識などのことです。一方、非認知力とは、テスト等で測ることのできない能力で、 ①自分について知っている ②自己コントロールができる ③他の人を理解できる ④対人関係を作れる ⑤問題解決できる といった五つの分野があります。


「ソーシャルメディアリテラシー」という知識・能力
「ソーシャルメディアリテラシー」とは、ソーシャルメディアにアクセスし活用する知識や能力・スキルのことです。得た情報を分析・判断し使えることや、ソーシャルメデイア利用から起こる問題を理解し、予防・対応する知識と能力・スキルも含まれるでしょう。
ソーシャルメデイアは、遊び、勉強、友人との付き合い、余暇の過ごし方に重要な役割を果たしています。その利用により生活を豊かにできるか、問題が起こってしまうかは、どう使うかに関わります。どう使うかを考えるために必要となるのが、ソーシャルメディアリテラシーです。
どんな知識をもっていますか? 調べる手段は準備できますか? どこで学びますか?

ソーシャルメディア利用に必要な共感力

世界的に有名な心理学者・教育コンサルタントであるミッシェル・ボーバは、ソーシャルメディアを上手に使うための力として「共感力」の重要性を提唱しています。共感力があれば、オンラインの向こうにいる人に思いやりをもって接することができるというのです。
そこで、ソーシャルメディアリテラシーを育てるリストを作りました。一つでも、二つでも、できるところから始めてください。これからの時代を生きる子どもに必要な力を育てましょう。

❶メリットとデメリットを家族で共通理解する
 「LINE」「Instagram」「YouTube」などのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、交友関係を広げ、新しい知識を得るのに役立ちます。SNS利用は、孤独感を減らし、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的にも満たされた状態にあること)を高めるという研究結果もあります。
その一方、トラブルに巻き込まれたという事例も多くあります。「アカウントを盗まれた」「ネットいじめにあった」「嘘の情報を信じてしまった」など、大人も気をつけなければいけません。
子どもが利用したいアプリやサイトについては、前もって話し合いましょう。例えば、アカウントを作る時、ゲームをするサイトのチャットを利用する時、自分についての情報をどのくらい使うか ・使わないか、メリットとデメリットをよく考えましょう。
オンラインで知り合った人が大切な友だちになることはありますが、自分がイメージしていた人と実際の人物が大きく異なる可能性もあります。相手を良く知らないまま安易に個人情報を教えたり、会ったりすることの危険性についてもよく話し合っておきましょう。

❷メデイア利用をサポートする
5歳児対象の研究によると、子どものデジタルメデイア使用時に母親のサポート度が高いことが、子どものレジリエンス(困難を乗り越える力)やウェルビーイングの高さに関係しているそうです。
具体的には、子どもが使用するアプリやサイトを選ぶ時のアドバイス、時間を決める声かけなど、前向きに関わるサポートです。
お子さんが成長するほど関わり方は難しくなっていきそうですが、「今、どんなアプリを使っているの?」と聞いて教えてもらい、調べることはできます。使用時間が長いと感じるようなら、時間を決める話し合いをします。これらの働きかけは、子どもの問題解決の力を育てるでしょう。

❸共感スキルの使い方を教える
オンライン上のコミュニケーションは、思ってもみない方向に変化して伝わっていく場合があります。そこで大切なのが、相手への思いやりを忘れないコミュニケーションです。
 ①相手の気持ちや考えを思いながら伝える
 ②送信前に相手の立場にたって読み返してみる

この二つを習慣づけましょう。
「自分が受け取ってもイヤな気持ちにならない文章かな」「誰が読んでも誤解されずに伝わるかな」「保存されて長く残っても大丈夫な内容かな」と想像してから送信するように心がけます。
もしも行き違いがあっても、日頃から共感の言葉かけを使えていれば、互いに対する信頼感があるため解決に向かえるでしょう。

❹一緒にルールを作る
メディア利用についての家庭のルールを作りましょう。原則として、誰にとっても公平で、誰でも守れるルールにします。
使用時間、ゲームやアプリの内容、人とのつながりなど、一番気になっている一つ、二つについて、どうして心配なのかを話し合ってはっきりさせ、好ましい方向に向かうためのルールを作ります。

❺相談する
身近に相談できる人は誰かいますか? 困った時に相談できる人を見つけておきましょう。公的機関の利用もいいですね。
総務省のサイト「上手にネットと付き合おう」には、相談・通報窓口があります。青少年向けの「インターネットトラブル事例集」などの情報も役立ちます。

※総務省:安心・安全なインターネット利用ガイド「上手にネットと付き合おう!」
ページトップへ