キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第14回>
「ちばエコチル調査つうしん Vol.19」(2021年9月発行)より一部改変して掲載)
子どもの感情スキルを育てたい
感情理解を助けEQアップ
コロナ禍の生活で、私たちのストレスレベルは高くなっています。子どもたちはどのような困難を感じているでしょうか?
自分の感情に気づき、言葉にして、信頼できる人に話せることは、とても重要です。そうすることで、周りの理解を得て、支援を受けることができるからです。
お子さんは、自分の感情・気持ちを表現できているでしょうか?
心理学の研究では、ポジティブな感情とネガティブな感情に分類することがあります。ネガティブな感情には「怒り」「イライラ」「悲しみ」「恥」「罪」「不安(恐怖)」、ポジティブな感情には「幸せ」「誇り」「安心」「感謝」「希望」「驚き」があります。どれが「良い感情」でどれが「悪い感情」ということはなく、どの感情にも役割があり大切です。
さらに、子どものネガティブな感情に対する親の反応は、「否定的反応」と「支持的反応」の2種類に分類されます。
否定的反応とは、「大したことない」などといったわいしょうか矮小化反応や、「そんなことでグズグズ言うならオヤツは無し」などと罰する反応です。
それに対し、支持的反応とは、「そうだね」「私もよ」といった受容・共感の言葉を返すことです。
日本の2歳児の母親を対象にした調査では、子どものネガティブな感情に対する反応としては、矮小化した否定的反応が多かったそうです。
たとえば、子どもが「怖い」と言ったら、励ますつもりで「怖くないよ」「大丈夫よ」などと言ってしまいがちですよね。それがどうして〝否定的反応〟になるのでしょうか?
例をあげて考えてみましょう。
コロナ禍の今、あなたの大切な友人が、「感染が怖い」と言ったとします。それに対して、あなたは「大したことないわよ」と返答するでしょうか?
それとも、「そうね」「私も怖い」など、友人の気持ちを受けとめ共感する言葉で応答するでしょうか?
支持的反応とは、ネガティブな感情を訴えた人が、「自分は理解され支えられている」と思える反応です。
大人たちの支持的反応は、子どもが自分の感情に気づき、それを言葉にして表現し、周囲の人の理解を得られる力を育てます。
支持的反応には、次の3つがあります。
❶ 感情表出を促す反応
「嫌なことがあったら、泣いてもいいし怒ってもいい」と、感情を表現するよう励ます対応です。
嫌なことや辛いことがあった時、人は泣いたり怒ったりして自己表現し、理解を得ます。感情を言葉で表現できない子どもに対しては、よく話を聞いて、気持ちを表す言葉を見つけ、教えます
❷ 情動焦点化反応
泣いている子ども、怒っている子どもを慰め、あやす対応です。
「そういうのは嫌だよね」「そんな時はお母さんも悲しい」など、誰でもそんな気持ちになるものだと知らせます。
子どもは、感情を受けとめ共感してもらえると、自分の感情の強さや、それがどれくらい続くか、自分の身体や行動に対する影響なども理解できるようになっていきます。
❸ 問題焦点化反応
どうすれば気持ちが落ち着くか、問題解決の方法を探ります。
冷たいお水を飲む、他の静かな場所に移動する、誰かと遊ぶ、ゲームをする、本を読む等、気持ちが落ち着く方法を見つけるように言います。
子どもが自分に合う方法を知っておくと自分で対応できる、つまり、感情コントロールができるようになります。
私たちは、うれしかった体験等、ポジティブな感情は気軽に人に話しやすいですが、苦しさや悲しみ等、ネガティブな感情は話しにくいですよね。それは、否定的な反応を予想してしまうからかもしれません。
毎日の様々な場面で支持的反応を示して関わると、子どもたちは感情を言葉で表現し、感情を理解し、感情に対応するという「感情スキル」が育ちます。
「EQ(感情知能・心の知能指数)」が話題になった時期がありました。感情を認知し、理解するといった能力で、やる気、根気、向上心、創造性などを育て、生活、仕事、人生の目標実現のために役立つといわれます。
感情スキルは、私たちの行動や決定に影響を与える大切な力になります。
子どもの感情スキルを育てる3つの支持的反応をどう使うか考えましょう。
子どもの気持ちを聞きましょう。どんなことがあったかを聞いたら、そのときの気持ちを言ってもらいましょう。子どもが言葉にできなかったとしても、顔の表情やしぐさで表すことができます。
その2 感情理解を助ける子どもが表現している感情について話します。
まずは、その感情を言葉で表現して、誰もが持つ感情であること、強い感情はだんだん弱くなっていくが、強い感情が長く続くと苦しくなることなど、感情理解を助けます。
クイズのように、気持ちの温度計(右)を使うこともできます。
気持ちの温度計で示してもらうと、感情の大きさ・程度を理解できます。
気持ちの温度計が高い場合には、対応が必要です。 友だちに言われたことに腹が立っている場合の問題解決には、友だちと話し合う、友だちに気持ちを伝える、友だちを相手にしないなど、いくつか考えられます。 でも、まずは気持ちの問題解決です。強い程度を低くするために、あるいは気持ちが楽になるためにできることを実行します。
感情スキルはEQであり、EQは人が成功を収める能力を指すといわれます。
ストレスの多い困難な状況を子どもたちがうまく切り抜けていくのを支援するために、子どものネガティブな感情に支持的に対応し、子どもの感情スキルを伸ばして、感情知能を育てましょう。