キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第11回>
「ちばエコチル調査つうしん Vol.16」(2020年3月発行)より一部改変して掲載>
子どもの考える力を伸ばしたい 「体を動かす!」
子どもたちの体力がピンチ!
2019年末に、気になるニュースが二つありました。
まず、スポーツ庁の全国体力テストの報告です。「小中学生の体力合計点は、男女ともに大きく低下した」という調査結果でした。幼児期からの運動時間が減ってきたことによる長期的な影響であると考えられるそうです。
でも、子どもの習い事のトップ10で、1番にスイミング、5番に体育・体操、9番にダンスが入っているのをみると、運動をないがしろにしているようには思えません。
いろいろなことに時間を取られる今の子どもの生活。スマートフォンやゲームに時間を使っているので、体を動かす時間が減ってきているという指摘があります。
また、一部の報道では、遊ぶ場所がないという事情が大きな要因であると指摘していました。
たとえば、公園では、ボール遊びの禁止や、「危ない」という理由で遊具が撤去されているという現実があります。今の子どもたちには、体を動かす時間も場所も見つけにくいのかもしれません。
体を動かすことは、心の健康だけでなく、考える力や記憶力の促進に良い、という心理学の知見が注目されているので、とても気になる発表でした。
時代とともに必要な読解力も変化
もう一つの気になったニュースは、学力の国際比較の結果です。
OECDによる国際学力調査の最新結果で日本の子どもの読解能力が15位に低下したことが報じられ、いろいろな原因が推測されています。
そんな中、今の時代に必要な読解能力は、ネットなどで得られる多様で大量の情報の中から自分が求める知識を得ることだというのです。
情報があふれている現代では、素早く要点をつかむ読み方が必要なのでしょう。必要とする正確な情報を取り出す能力は、今までの読解力とは違うのかもしれません。
でも、素早く要点をつかむには「考える力」がないとできそうにありません。
軽い運動が考える力や記憶力をUP!
子どもの能力低下のニュースについて考えている時に、短時間「体を動かす」ことが、考える力や記憶力の向上に効果があることを確認した研究を見つけました!
イギリスの11613人の児童が参加した研究です。
同じ活動を行ったあとの子どもたちを次の3つのグループに分け、15分間の休憩を、異なる内容で過ごしてもらいました。
〇 グループ1は、20メートルシャトルラン(20m間隔に引かれた線の間を往復して走る)を行う。【激しい運動】
〇 グループ2は、走ったり歩いたりする。【軽い運動】
〇 グループ3は、教室を出て座るか立っているかする。【運動しない】
その結果、軽い運動を行ったグループ2の子どもたちの気分、注意力、記憶、学ぶ能力が、他のグループの子どもたちに比べて向上したのです。
15分は長い時間ではありませんし、その辺を走ったり歩いたりするために安全な場所は必要ですが、特別な場所に行く必要はありません。とても勇気づけられる研究結果です。
学校の休憩時間に走ったり歩いたりするよう促すのは、難しいこともあるかもしれません。
まずは、家庭で取り入れてみましょう。
月曜日から順に、どの時間にできるか決めましょう。 その際には、子どもの意見を尊重します。自分の考え・意見があること、それを言えることは、「考える力」を育てます。 子どもが無理なくできる時間帯を見つけましょう。
一緒に外に出てどこでできるか考えます。走ったり歩いたりする場所が見つけられるでしょうか?
気持ちよく過ごせる安全な場所、たとえば、公園や空き地、道端などはありますか?
時間と場所が決まったら、そこでどう過ごすか決めます。
歩き回る、走り回る、という活動が自分でできる人もいるでしょう。でも、どういうことができるか具体案を出し合って、楽しそうな活動をみつけるのは「考える力」になります。
決まったら、実行します。うまくいけば、そのまま続けますし、変更が必要なら工夫してみましょう。
決めたことを表にしてよく見えるところに貼ったり、実行したらもらえるシールやスタンプがあると励みになります。
水分補給は体にも頭にも重要
運動すると水分補給が大切です。体の大部分を占めている水分が不足してしまうと体に不調がでます。
体全体に酸素が行き届きにくくなるので体の様々な機能が低下し、その結果、運動能力が衰えたり、集中力や判断力が低下したりするそうです。
また、脱水症状に陥ると、体温調整をする汗が出なくなって体温が上がってしまい、熱中症にも繋がります。
体を動かすよう励ますと同時に、水分を補給する大切さと補給方法を教えましょう。