子どもの健康情報
化学物質を体にためこまない方法は?
千葉大学予防医学センター 森 千里 センター長
私たちのグループが行った他の研究で、日本人のお母さんから出産時にへその緒をいただいて調べたところでは、PCB類やダイオキシン類など脂肪に溶けやすく体にたまりやすい化学物質が、すべての人のへその緒から検出されています。
つまり、お腹の中にいる赤ちゃんは、お母さんからPCB類やダイオキシン類などの化学物質を受け継いでいるということです。
ちなみに、脂肪に溶けにくく水に溶けやすい物質は、尿などとともに体の外に出やすいのでたまりにくいのです。
これらの化学物質は、どのように私たちの体の中にたまっていくのでしょうか?
ほとんどは食品に含まれていて、食べることによって体内に取り込まれており、空気や土壌から取り込んでいる量は食品に比べてわずかです。
では、どの食品から取り込むことが多いのでしょうか?
図を見ていただければおわかりのとおり魚介類からが非常に多く、次に肉・卵類から、そして、牛乳や乳製品からと続きます。
それではなぜ、魚介類からは多くの化学物質が取り込まれるのでしょうか?
それは、小さな魚から大きな魚へと食われるごとに魚の体内の汚染物質の濃度が高くなる「生物濃縮」が起こり、化学物質の濃度が高くなっていくからです。
食物連鎖の頂点にいるマグロなどの大型魚類の体内のPCB濃度は、土壌や水中のPCB濃度に比べて1300万倍も高くなります。
一方、牛などの家畜は牧草を食べるので、牧草から家畜へというわずか一段階の生物濃縮しか起こらないため、魚に比べてそれほど高いレベルのPCB濃度にはならないのです。
つまり、お肉をたくさん食べてもPCBの濃度はあまり上がりませんが、マグロなどの大型魚を好んで食べる人の体の中には、PCBなどが高くなってしまうのです。
では、蓄積性が高い化学物質をため込まないようにするにはどうしたら良いのでしょうか?
1)汚染の低い地域でとれる魚や、汚染の低い種類の魚を選ぶ
2)汚染の程度が分からない食材は、同じものを食べ続けない
3)加熱調理して環境化学物質を減らす
4)緑色野菜を食べる
とされています。
その根拠は、以下のとおりです。
1)水産庁 による「平成16年度農畜水産物に係るダイオキシン類の実態調査の結果」では、たとえばクロマグロでは、国産の方がクロアチアからの輸入ものと比べてダイオキシン類濃度が約1/4~1/3です。
マグロの大トロ(脂肪分がたっぷりある)は赤身の約24倍、中トロは赤身の約15倍のダイオキシン濃度です。
マグロを食べるなら、産地や食べる部位に気を使った方が、化学物質を取り込む量は減らせます。また、近海の小型魚の方が濃度は低いので、子どもに食べさせるならばマグロよりも小さな魚を食べさせることで汚染濃度を減らせます。
2)化学物質汚染についての情報がない場合、ひんぱんに食べているものの濃度がもし高ければ体に取り込む量は増えていきます。
そこで、特定の食品に偏って食べるのではなくなるべく多くの種類をバランスよく食べる方が取り込む量も減らせます。
3)生で魚を食べるよりも、焼く、煮るなどの調理をして油を落とすことにより、PCB量を減らせることもわかってきています。
4)緑色野菜によって、排出が促されることも報告されております。
結局、食育で指導されているように、バランスよく食事をとるのが一番良いのです。
ご参考にしていただければと思います。
<2013年8月発行「ちばエコチル調査つうしんVol.3」(2016年2月一部修正)より転載>