キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第9回>
「ちばエコチル調査つうしん Vol.14」(2019年3月発行)より一部改変して掲載>
子どもの成長を応援したい 「安定した関係の大切さ」
愛着の関係について教育や保育の場でよく話題になります。
愛着は、子どもが「誰か」と心の絆で結ばれている関係のことです。「誰か」になるのは、たいていは保護者や養育者ですが、他の人の場合もあります。
愛着の関係は、不安や恐怖を乗り越えて新しいことを知ろうとする心を支える安全基地の機能を果たします。
脳科学では、子どもの脳は安全で安心できて気持ちよく感じられる環境で最もよく発達することが明らかになっています。
安全で安心できて気持ちよく感じられる環境を子どもに提供するポイントを、「ストレインジ・シチュエーション」(エインズワースら、1978年)という愛着の実験を参考に考えましょう。
これは、見知らぬ場所で親と一時的に離れた子どもが、親と再会した時に、親にどう反応するかを観察した実験です。その結果から愛着関係のタイプを、安定型、回避型、葛藤型の3つにまとめました。
安定型の子どもは、親と離れた時は多少混乱してぐずりますが、再会した時には親を歓迎し、積極的に身体接触をするという特徴がありました。
このタイプの親の養育態度には、この後でポイントとして挙げる敏感性と一貫性があり、子どもにとって安全基地機能を果たしているという特徴があります。
回避型の子どもは、母親と離れても泣かず、また再会しても喜ばないという特徴があり、養育態度には、時に応じて微笑む、スキンシップするなど子どもに反応する敏感性に欠けていました。
葛藤型では、子どもは再会した母親に近づくのですが同時に拒否的な行動も示しました。養育態度には一貫性が欠けていました。
子どもにとっての安全基地機能を果たしている安定型タイプの養育態度を、詳しく見ていき、ポイントを学びましょう。
■1.機敏性
一貫した対応とは、何が良い行動なのかを教える価値観が変わらないという対応です。
子どもは、その場面で何を期待されているのか、つまり、何をすればいいのかが分かっていると、安心して落ち着いていられます。
表情や話し方というのはその時々で変わってくるものですが、何が大切なのかを教えるという点では、一貫した対応が大切です。
■2.安全基地機能
子どもの発達には、新しいことを知るという行動が必要です。この探索行動は生後6か月くらいから始まり、子どもに様々な学習体験をもたらします。
好奇心いっぱいの子ども、新しいことが苦手な子どもといろいろですが、全ての子どもに探索を行おうとする本能が備わっているそうです。
探索行動には、困ったときに戻ることができ、エネルギーを補給できる安全基地が必要です。
安全で安心できると感じられる環境が安全基地であり、その基地を離れて探索する子どもを、愛着の絆がサポートします。
親が安全基地の機能を果たすためには、敏感性と一貫性のある環境を提供していることが大切になります。
近年、愛着の対象が一人ではなく数人いるという愛着のネットワークが注目されています。
安全基地はいろいろなところで、いくつも作れるということです。いくつあってもいいでしょう。
子どもの発達を支援する愛着のネットワークを作りましょう。