エコチル調査とは、子どもたちが健やかに成長できる地球環境を未来に残すため
環境省が2011年から実施している大規模調査です

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キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第15回>
 「ちばエコチル調査つうしん Vol.20」(2022年3月発行)より一部改変して掲載)

自分を大切にする力を育てたい
「ありがとう」をさがす

2022年は、たくさんの夢がかなう年になってほしいです。
コロナ禍の生活は続いても、私たちは上手に対応していくでしょう。
困難を感じる時こそ、子どもたちに自分を大切にして過ごしてほしいものです。

では、自分を大切にするにはどうすればいいのでしょうか。
簡単ではないかもしれませんが、自分に対して批判ばかりせず、うまくいったこと、いかなかったことを、それぞれそのまま受け止めて、自分の頑張りを認めていけるといいですね。
「ありのままに受け止める」、これは以前「ちばエコチル調査つうしん17号」でご紹介したことのある「マインドフルネス」の方法です。
「今、ここを大切にする」ことで心の安定や集中力などを高めるマインドフルネスは、自分を大切にすることにつながります。
でも今は、不自由さや我慢の多いコロナ禍の生活で、私たちは楽しむ機会やチャレンジするチャンスを手に入れにくく、失ったものが多いと感じています。そして、「今、ここにあるもの」ではなく、「今ないもの、今持っていないもの」ばかりに注意を向けがちな傾向が高まっています。
できないことばかりを考えていると、気持ちが落ち込み、未来へ向かうエネルギーは減っていってしまいます。

そこで今回は、自分を大切にして、そこで生まれる未来に向かって歩んでいくエネルギーを作る方法について考えてみましょう。
今日から明日へ向かうエネルギーは、自分を大切にすることで作られます。やはり、「今、ここを大切にする」中で生まれるのです。
なぜなら、「今、自分にあるもの」「今、自分が持っているもの」で困難に立ち向かい、険しい道を切り開いていくことができるからです。今、自分にあるものは、自分が使える道具や資源に例えることができます。

では、どうすれば、自分に今あるもの、自分が今持っているものがわかるでしょうか?
マインドフルネスゲーム「ありがとうをさがそう」を紹介します。
たとえば、果物を口にする時に木を植えた人を考えると、そこから、木を育てた人、実を収穫した人、運んだ人、お店の人、買ってきてくれた人、食卓に出してくれた人など、多くの人の努力や熱意があると気づきます。
毎日の生活で「ありがとうをさがそう」を実践すると、ウェルビーイングが向上するという研究結果があります。

「ウェルビーイング」(well-being)とは?
直訳すると、「幸福」「健康」「福利」という意味。心身が健康で、肉体的にも精神的にも、社会的にも満たされた状態にあること。

まずは、レーズンを使った、こんなゲームから始めましょう。

レーズンゲーム

レーズンを準備します(お宅にある別の食品でも構いません)

レーズンを食べる前に、どうやって手元にたどりついたか考え、その道筋に関わった人や、場所、物事に、ありがとうを言うゲームです。
【問いかけ】レーズンを見ながら、どうやって自分のもとに来たか考えましょう。

  1. 土地を栄養いっぱいにした虫たちを考えましょう。
    「ありがとう、虫たち!」
  2. ぶどうの木を植え世話をした農園の人たちを考えましょう。
    「ありがとう、農園の人たち!」
  3. ぶどうの木を育てた太陽と雨のことを考えましょう。
    「ありがとう、自然!」
  4. ぶどうを収穫して乾燥させレーズンにしてくれた人たちを考えましょう。
    「ありがとう、たくさんのお仕事をしてくれた人たち!」

子どもたちは、もっとたくさんのありがとうを見つけるでしょう。

ありがとうを見つけるゲーム

毎日の生活のなかで、ありがとうを見つけていきます。
子どもと話すゆったりした時間がある時に、今日、または、昨日、見つけたありがとうを報告し合います。
あなたは、どんなありがとうを報告するでしょうか?

ありがとう日記

子どもたちに「ありがとう日記」を書くように提案するのも良いでしょう。毎日を振り返る力を育て、自分が持っている資源に気づく力を育てます。
あくまで日記ですから、子どものプライバシーを尊重します。見てもいいという許可があれば見せてもらいます。子どもの生活がよく理解できるのではないでしょうか。
家族、先生、友だちへのありがとうの他に、自分の好きなゲームや頑張ったテストへのありがとうを書いた子もいましたよ。
欧米では、大人用、子ども用の「感謝の日記」がいろいろなデザインの冊子となって販売されています。どんなフォームでもいいです。かわいいノートを使うなど楽しく続けられるものがいいですね。

ありがとうを見つけるゲームは、自分がいろいろな人といろいろな形でつながっていることを考えるきっかけになります。大勢の人が自分の生活に関わっているという認識は、人間社会における「相互依存」の理解につながります。
子どもにはむずかしい概念ですが、見えても、見えなくても、自分は誰かとつながっていると感じることができます。そして、自分の生活を支える多くの存在を感じることで、自分を世界の一員として感じていきます。
人とつながる自分は力強い存在です。私たちの研究においても、人とつながっている意識、周りに自分のサポーターがいるという認識は、レジリエンス(困難を跳ね返す力)やウェルビーイングにつながっていることがわかっています。
ありがとうをさがすゲームを通じて、子どもといっしょに、今ここにいる自分を大切にして、今日を生き抜き、明日に向かうエネルギーをチャージしましょう。

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