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環境省が2011年から実施している大規模調査です

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子どもの健康情報

肥満について

まなこどもクリニック院長 原木 真名 先生

この数年、肥満の子の割合が増加しています。 肥満はさまざまな健康被害を引き起こすため、子どものうちから対策を考える必要があります。

肥満の頻度

令和3年度の学校保健統計によると
▼男子では
11歳 : 12.5% 14歳 : 10.3% 17歳 : 10.9%
▼女子では
11歳 : 9.4% 14歳 : 7.8% 17歳 : 7.1%
の児童が肥満の範囲(肥満度20%以上 )でした。

肥満の定義

成人ではBMIという指標を使って肥満を判定しますが、成長期の小児では「肥満度」を基準として使用します ▼

6歳以上では20%以上を肥満とし、20~30%を軽度肥満、30~50%を中等度肥満、50%以上を高度肥満と分類します。

肥満の健康被害

過剰摂取で余ったエネルギーは、グリコーゲンや中性脂肪に作り替えられ、内臓脂肪となったり皮下脂肪となったりするほか、肝細胞に蓄えられて脂肪肝を引き起こします。
脂肪肝は放置すると、肝炎や肝硬変などへ悪化します。糖尿病を合併することもあります。脂質異常(高コレステロール血症や高中性脂肪)を起こし、動脈硬化の主な原因になります。

脂肪細胞からは「アディポサイトカイン」という物質が分泌されています。アディポサイトカインは、血管内の細胞を傷つけて動脈硬化を悪化させます。
また、肥満がいじめを受ける原因となり、不登校などにつながってしまうこともあります。

改善に向けて

肥満を改善するには、生活習慣全体の改善が必要です。

カロリー過剰摂取の改善
● 脂肪の多い食品、調理方法、糖質が多くなる料理などの食事内容や量の改善
● 牛乳やジュースの飲み過ぎ、高カロリーなおやつの食べ過ぎの改善

ジュースやコーラ類には多量の砂糖が含まれています。例えば、500mlのペットボトル1本の甘い炭酸飲料には、なんと角砂糖17個分が含まれているのです。
欠食、不規則な食事は、次の食事の過食や間食につながりやすいです。お菓子やジュースを家に買い置きしないなどの注意も必要です。

活動性の改善
活動性の低下は、肥満の大きな原因です。
子どもが体を動かすことには様々な意味があります。歩く、走るといった基本的な活動によって、安定した運動能力を獲得し身体機能が発達していくとともに、消費エネルギーも上がります。

しかし、活動量が少ないと、身体機能の発達によって徐々に増加する筋肉などが年齢相当に増加せず、運動が苦手な子どもになってしまいます。筋肉が少ないので年齢相当の基礎代謝量とならず、消費エネルギーが低下します。
ゲームや動画の長時間視聴は、体を動かしていない(活動性の低下)上に、体を動かす時間を奪ってしまっています。

お子さんのモチベーションをあげるために
「食べる量を減らそう」「よく運動しよう」などと言い聞かせても、子どもたちの心には響きません。肥満を改善するモチベーションを子ども自身にもってもらうことが大切です。
子どもたちも、肥満でいることが良いとは思っていないはずです。肥満解消でどのような良いことがあるかを話し合ってみましょう。スポーツが得意になる、かっこ良くなる、好きな服が着られるなど。話し合う時は、肥満のままでいると将来いろいろな病気につながるということを教えてあげてください。
本人が肥満改善にむけて何かやろうという気持ちが出てきたら、具体的に何をやるかを決めてみると良いですね。ジュースは特別な時だけとか、食べる時によくかむ(30回)など。
運動が苦手な子には、万歩計をつけて、一日の目標歩数を決めて、ごほうび作戦などはどうでしょう。
ゲームばかりやっている子には、一定時間体を動かすことを条件にゲームをやって良い時間を決めておくと良いかもしれません。「ゲームばかりやってちゃダメ!」と叱るより、ゲームをするのはこの時間だけと約束し、約束が守れたら必ず認めて(ほめて)あげましょう。
毎日決まった時間に体重をはかり、表やグラフに“見える化”することも効果的です。

成長期のお子さんは身長が伸びていきますから、体重を減らすのではなく、キープするだけで肥満度が下がってきます。
健康で活発な成人期を迎えられるように、ご家族で取り組んでみてください。

<2024年3月発行「ちばエコチル調査つうしん 24号」より、一部改変して掲載>

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