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環境省が2011年から実施している大規模調査です

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子どもの健康情報

便秘について

まなこどもクリニック院長 原木 真名 先生

腹痛の患者さんを診察すると、便秘が原因であることが多いです。救急車で運ばれてくるほどの激しい腹痛の原因も便秘であることがしばしばあります。
毎日何回か便が出ていると、便秘ではないと思ってしまいますね。しかし、実際にはおなかの中にたくさん便がたまっていることがあります。ある調査では、15%の子どもが便秘であるという結果が出ています。
大人になっても便秘で悩んでいる方は多いです。子どもの頃からの便秘を放置せずに治療することがとても大切なのです。
たかが便秘、されど便秘。

排便のメカニズム

便を出すメカニズムは複雑です。食べたもののうち、消化吸収されなかったものが“便のもと”となり、結腸(けっちょう)に達します。結腸の始まりは右の下腹部で、時計回りにお腹を一周し、直腸(ちょくちょう)に達します。便は最初はドロドロですが、結腸の中を動くうちに水分が吸収され、形のある便になります。
便が直腸に入り直腸が拡張すると、直腸壁のセンサーが信号を脳に届け、便を出すように指令が出ます。これが便意です。そして、肛門を開き、腹圧をかけて、便を排出するというしくみが働きます。

便秘のしくみ

何かの理由で便が直腸の中に長くとどまると、直腸がずっと広がったままになるので、直腸壁のセンサーが鈍くなり、便が入ってきたことを知らせる脳への信号が次第に弱くなっていきます。便意が弱くなるため、直腸の中には慢性的に便がたまっていきます。排便までに時間がかかると水分吸収が進み、便はどんどん硬く大きくなります。こうしてできるのが「便塞栓(べんそくせん)」です。

便塞栓があるサインは、おなかをさわると硬い便を感じる、いきんでいるが便が出ない、ウンチで下着が汚れる、少量の硬い便が何度も出る、などです。
直腸にたまった便塞栓の回りから、せき止められた便汁が流れ出し、“便秘しているのに水様便が出る”という、わかりにくい状態が発生することもあります。

便秘の治療

❶便塞栓の除去
便秘の治療は、出口をふさいでいる便塞栓を取り除くことから始めます。取り除くために浣腸や座薬などを使います。便塞栓をしっかり取り除くため、数日続けることもあります。

❷維持療法
便をやわらかくする薬を使用し、便が出やすい状況を保ちます。
また、便秘の状態が長く続いていると直腸のセンサーが鈍くなっているので、便が入ってきても便意をもよおさないことがあります。そのため、便意がなくても定期的に排便する習慣をつけることが大切です。

お子さんが成長するにつれ、保護者が排便の状況まで把握することは難しくなりますね。
お子さんに「どんなうんちが出た? お尻が切れて紙に血が付くことはない?」と聞いても、「わからない」と言われたり、うるさがられてしまうことが多いでしょう。“うんちの話”は、年齢があがると恥ずかしがってなかなか話してくれなくなるだけに、親子一緒に排便習慣の大切さを理解し、自分の排便の状態をしっかり把握してほしいと思います。

便の状態は「ブリストルスケール」という便のタイプ(硬さ)を7種類に分類した世界共通の指標でチェックできます。下の図の4番から5番の便を、毎日無理なく排泄できるのが理想的な状態です。

便秘の治療薬
● 便をやわらかくする薬(浸透圧性下剤)
ポリエチレングリコール、酸化マグネシウム、ラクツロースなどがあります。ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)は、腸にたまっている便の中に水を引き込んで便をやわらかくし、さらにふやかして嵩(かさ)を増す作用があります。比較的新しい薬ですが、量の調節もしやすく、使いやすいです。ラクツロースは乳幼児に使用する甘いシロップです。酸化マグネシウムは歴史の古い薬です。粉、錠剤があり、モビコールを飲みにくい子どもに処方することが多いです。

● 便を出す薬(刺激性下剤)
便がやわらかくなっても、直腸のセンサーが鈍くなっていると排便がうまくいきません。そのような場合、腸を刺激して排便させる刺激性下剤(ラキソベロンなど)を併用する場合があります。ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン:液体、錠剤)ピサコジル(テレミンソフト:座薬)などがあります。

● その他
漢方薬が使われることもあります。成人を中心に、上皮機能変容薬、胆汁酸トランスポーター阻害薬などの新しい薬剤も開発されてきています。

「薬を飲むことがクセになりませんか?」とよく質問されます。「腸が便をため込むクセ(習慣)を持ってしまったので、それを治すために薬を飲むのです。ため込むクセが治れば、薬はやめられます」とお答えするようにしています。
直腸のセンサーが回復するにはかなりの時間がかかります。便秘だった時間が長ければ長いほど、回復には時間がかかります。「便秘だった年数と同じくらい、治療が必要」と言われています。
「便が出なくなったら薬を飲む、出たら薬をやめる、また出なくなったら薬で出す」というやり方では、直腸のセンサーは回復せず、根本的な治癒にはつながりません。むしろ、さらに頑固な便秘につながってしまいます。
大人になってしつこい便秘で悩まないために、子どものうちから排便習慣を見直しておきましょう。

※参考資料:「子供の便秘はこう診る!」十河剛著
<2023年9月発行「ちばエコチル調査つうしん 23号」より、一部改変して掲載>

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