エコチル調査とは、子どもたちが健やかに成長できる地球環境を未来に残すため
環境省が2011年から実施している大規模調査です

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キット先生の豊かな心をはぐくむ子育て<第13回>
 「ちばエコチル調査つうしん Vol.18」(2021年3月発行)より一部改変して掲載)

子どもの「メタ認知能力」を育てたい
自分の考えや記憶を客観的に理解する力

今回は、いま注目されている「メタ認知」という生きる力を支える能力について考えてみましょう。
小学校1年生の授業を見学していると、子どもたちが競うように先生の質問に答えようとします。
でも、子どもたちはそのとき自分の考えや記憶をどのくらいわかっていて発表しようとするのでしょうか?
ここに「メタ認知」の力が関わってくるのです。

「わかった」と答えても…

保育園で心理プログラムを実施していたとき、各回の終わりにその日の感想として、「楽しかったこと」や「困ったこと」を発表してもらいました。
皆さん、元気よく手をあげてくれますが、いざ指名すると黙ってしまう場面が多くありました。
自分の活動を振り返るには、自分の考えや記憶を客観的にみる力が必要になります。
子どもに「わかった?」とたずねると「わかった!」と答えたにも関わらず、本当はわかっていなかったということも多々あると思います。
これは、本当はわかっていないのにいい加減に「わかった」と答えたのではなく、自分の理解や記憶を評価できる力が未熟なのだと理解してあげることが必要です。

「メタ認知」とは

自分の考えや記憶を理解し評価する(どのくらい覚えているかなど)能力は「メタ認知」「メタ記憶」と呼ばれます。
自分の考えや記憶を評価できるようになるのは、言語能力が発達する10歳~12歳頃といわれています。
記憶の実験で、5・7・10歳児に7種類の絵を見せて15秒後に思い出してもらうという実験があります。
その際、自分が覚えていられるよう、必要なリハーサル(内容を口頭や頭の中で繰り返す)を行ったのは、5歳児で10%、7歳児で60%、10歳児では85%だったそうです。
つまり、5歳児の多くが、自分は覚えていられると思って何もしなかったのに対し、10歳児の多くは、自分の記憶力を客観的に評価できているため、覚えるためのリハーサルを積極的に行っていたのです。
この例が示すように、自分の考えや記憶をチェックして評価する力は、学習や生活に必要な行動につながるとても大切な力といえます。

役立つメタ認知

メタ認知は、自己をコントロールする力や、他人と協力して活動する力につながることが研究されています。
自分を理解することは、自己コントロール力を育て、他者を理解する力となり、さらには、非認知能力(社会性と感情の力・学びに向かう力)を育てます。つまり、今の学校で進められている協同的学びにつながります。
意見を言えたり質問したりする活動は、自分の考えや理解を自分でわかっているからこそ可能となります。
メタ認知は学力に影響するという研究もたくさんあります。
例えば、学んだことを覚えようとするときにまず大切なのは、自分が覚えているかいないかをはっきり評価することです。その結果、もっと覚える必要があれば、リハーサル(繰り返し)を行う、図を描くなど、何らかの作戦をたて、改善策を実行するためにメタ認知が役立ちます。

メタ認知を育てる言葉がけ

自分の考えや記憶を評価する活動は、振り返り活動です。
「今日はどんなこと(遊び・勉強・クラブ活動など)をしたの?」と聞くと、子どもはその日を振り返って話してくれます。そういう毎日の会話をひと工夫し、メタ認知の発達につながる言葉がけをしましょう。
その際、関心がある表情や態度を示しながら聞くことも、子どもの自尊感情の向上につながるので大切ですね。

その1
振り返りをうながす言葉がけ

具体的に質問して、思い出すきっかけをつくる
(例)「今日は誰となわとびをしたの?」「国語の時間にどんなお話を読んだの?」「クラブで筋トレはしたの?」など。

メタ認知を働かせる振り返りを促す
(例)「前よりだいぶうまくできた?」 「どんなところをがんばったのかな?」 「どんなところがおもしろかった?」 「途中でいやになったっていったけど、どうやって最後までがんばれたの?」など。

その2
振り返りを次の行動につなぐ言葉がけ

人はほめられるとその行動を行う回数が増えますよね。
がんばった行動、楽しく過ごした体験を、具体的に何が良かったのかわかるようにほめます。
(例)「前より跳べる回数が増えたって、すごいね。上手になるこつがあるのかな」 「お話をよく覚えていたね。よくわかるようにお話してくれてありがとう」 「きつい筋トレを毎日がんばっているから、体力がつくよね」など。

困っているようならヒントやアドバイスを与え、前向きな行動につなげましょう。
(例)「日曜日におうちでいっしょに縄跳びしよう」 「漢字は難しいよね。いっぺんには覚えられないから、毎日いくつ覚える?」など。


いかがでしょう?
振り返りの機会を作る時間が見つけられそうでしょうか。
いくつになっても自分を振り返る力は役立ちます。
言葉がけを実行しながら、自分自身のメタ認知も育てていけるといいですね。

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