B型肝炎ワクチンを受けましょう!
まなこどもクリニック院長 原木 真名 先生
■B型肝炎の感染経路は
B型肝炎ウイルスは、血液や体液(唾液や汗、尿など)を介して感染する感染症です。感染の仕方は、分娩時に母から感染する「垂直感染」と、生後、周囲の患者さんから感染する「水平感染」があります。
B型肝炎が血液や体液を介して感染することはよく知られており、血液や排泄物をあつかう医療関係者は感染リスクが高いです。
性交渉でも感染します。血液以外でも、汗、涙、尿などから感染する場合があるため、日常生活でも感染のリスクがあります。
保育園で集団感染が起きてしまった事例や、相撲やレスリングなど体の接触が多いスポーツでの集団感染が過去に起きています。
B型肝炎にはA~Hの8つの遺伝子型があり、以前は遺伝子型Cが多かったのですが、最近遺伝子型AのB型肝炎が増えています。
遺伝子型Aは成人でもキャリア※になる率が高く、気がつかないうちに感染してしまう(させてしまう)リスクが高くなっています。
B型肝炎ウイルスが肝臓に入ると、一過性の感染を起こす場合と、持続性の感染になる場合があります。
(※キャリア:感染しても発症はせず、ウイルスを体内にもち続けている人)
■そもそもB型肝炎って、どんな病気?
①急性肝炎
B型肝炎ウイルスに感染しても、7~8割は無症状で治癒します。2~3割
の方が急性肝炎を発症します。
疲れやすくなり、黄疸が出たりします。ごく軽症ですむ場合もありますが、重症になると、劇症肝炎になり、命を落とすこともあります。
②慢性肝炎
急性肝炎が慢性化することもあります。慢性肝炎は、適切な治療がされないと、肝硬変、肝臓がんへと進行することがあります。
また、一旦治癒したようにみえても、肝臓の中には一生ウイルスが潜んでいて、免疫が低下したときに肝炎が再燃(おさまっていた症状が再び悪化すること)して重症になることがあります。
垂直感染(分娩時の感染)や低い年齢での感染では、感染時に症状は出にくいですが、感染が持続するキャリアになることが多いです。
無症候のまま経過することもありますが、じわじわと肝炎が進行していくケースもあり、子どもでも肝硬変、肝臓がんと進行していく心配があります。
■B型肝炎の予防接種について
日本では、以前から母子感染予防の対策が取られていました。
B型肝炎のキャリアであるお母さんから生まれた赤ちゃんに、免疫グロブリンとB型肝炎ワクチンを接種する方法です。この対策により、母子感染は防止できるケースが増え、患者さんも減少しました。
しかし、患者さんをゼロにすることはできません。母以外の家族やその他の人から感染しているケースもあります。
水平感染や原因不明の感染を防ぐには、全てのお子さんへのワクチン接種が必要です。
2016年10月からB型肝炎ワクチンが定期接種に組み込まれ、ユニバーサルワクチネーションが始まりました。(ユニバーサルワクチネーション:全てのお子さんたちにワクチンを接種するという方法です)
B型肝炎の定期接種は生後2か月から1才の誕生日の前日までで、その間は無料で受けられます。1才の誕生日を過ぎると、任意接種となり有料となります。
定期接種の年齢のお子さんたちについては100%に近い接種率が得られています。素晴らしいですね!
2016年4月以前に生まれたお子さんは、定期接種の対象になっていなかったため、B型肝炎のワクチンを受けていないお子さんが多いのではないかと思います。
(B型肝炎が定期接種の対象になる前から、乳幼児からの接種の必要性は全国の小児科医の間で共有されており、接種を受けているお子さんもいらっしゃいます。)
B型肝炎に感染してしまうと、一生病気と闘っていくことになります。
B型肝炎のワクチンは、肝炎を予防することはもちろんのこと、がん予防ワクチンであり、性感染症予防ワクチンでもあります。
大変歴史の古いワクチンで、安全に接種できます。1才を過ぎている方には有料になりますが、接種を受けることをお勧めします。(お子さんたちだけでなく、保護者の方達も接種することができます)