千葉大学予防医学センターは、「健康な体」「健康な心」「健康な環境」を基盤にした社会づくりを目指して、2007年(平成19年)に設立されました。初代センター長は齋藤康・元千葉大学長、2代目センター長は森千里・医学研究院教授です。
齋藤先生、森先生は従来の予防医学の型にはまらず、ゼロ次予防の概念を含めた予防医学の研究・実践の場として予防医学センターを発展させられました。疾病の予防には各人が健康に好ましい行動・生活習慣をおこなっていくことが大切ですが、一方でそれを始める、あるいは継続することが難しいこともよく経験されることです。ゼロ次予防分野では、環境を整えることにより、健康に好ましい行動・生活習慣が自然と実践できるようにすることや健康に好ましくない環境因子のない環境をつくることで疾病を予防することを目指します。当センターではゼロ次予防分野の研究を工学系の研究者と医学系の研究者がディスカッションを重ねながら進めています。
予防医学の研究・実践においては人の一生を通した視点を持つことも重要になります。このような視点からライフコースヘルスケアといった考え方が提唱されています。今までの医学研究では小児領域、成人領域、老年領域がそれぞれ独立して研究を行い多くの成果を出してきました。ライフコースを通した研究ではそれぞれの領域の専門家が力を合わせて課題に取り組むことが必要になります。予防医学センターには小児科、内科、老年科の各専門家が所属しており、日々ディスカッションを重ねています。研究フィールドとしても、胎児期からの環境因子と成長・発達・疾病との関連をみる出生コホートである「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査 JECS)」や「こども調査(C-MACH)」、高齢者のコホート調査である「日本老年学的評価研究(JAGES)」があり、これらの調査を活用しライフコースを通じた予防医学の研究をおこなっています。
予防センターでは現在までに世界保健機関(WHO)などの国連機関やフランスやドイツの大学などでの研修を通じて国際的に活躍できる人材の育成に力を入れてきました。
千葉大学予防医学センターは、異なる分野の研究者が共に手をたずさえ、50年後あるいは100年後も健康な社会を目指した研究を進めていきます。そのためには、若い研究者が世界とつながり、最先端の研究に触れ、私たちと共に研究を進めてくれることを期待しています。
予防医学センター長
櫻井 健一